2023年2月でpaletteが発足してから3年。今回は“paletteカケル”と称して、モデレーターの役割を担ってくれる方をお迎えし、palette編集部と話すという新企画です。”paletteカケル”の第1回目はまちづくりや青少年をサポートする活動に携わっている白川陽一(しらかわよういち)さんpart 1.ではそれぞれの身の回りの“社会”の変化について、座談会形式でお送りしました。part 2.では”paletteのこれまでとこれから”について話し合っています。

palette創設談、魔力に吸い寄せられるように…

白川 第2部は、 “palette座談会”と称しまして、これからのpaletteについてお話をします。僕自身もリアルで会うのは初めての方もいらっしゃるので、paletteについて知らないことの方が多いかと思います。教えてもらいたいこともあるし、気になる点があれば深掘りをしたり、たまに寄り道もしながら進めていきたいと思います。よろしくお願いします。

なる美・岩田・miho よろしくお願いします。

白川 paletteがスタートしてから、3年ほど経っていますね。コロナも含めて色々なことがこの間にあったと思うんですけれど、編集部の3人はどういうモチベーションで、なぜこれまで3年間一緒に活動をしてこれたのか、その辺りの気持ちを聞いていきたいと思います。今の皆さんが初期メンバーですか?

なる美 カメラ・映像担当の岩田さんはスタート当初からいてくださっていて、インタビュアー兼ライターは、以前は他の方がやってくれていたので、mihoは割と最近加わってくれています。

白川 mihoさんはいつからメンバーに加わったんですか?

miho 去年(2022年)4月の尾藤雅士さんのインタビューが最初のお仕事でした。突然なる美さんから連絡が来て、ちょっと仕事のお手伝いをしてくれないかと誘われたのが始まりでしたね。対象者にインタビューをして、その音源の文字起こしデータを編集して、記事の大元を作成しています。

白川 なる美さんとの元々の関係性は?

miho 大学の友人です。

白川 お友達で、いきなり誘ったんですか?予告なしで?(笑)

miho 久しぶりに連絡が来たかと思ったら「今電話できる?」って。「何の話だろう??」って思いましたね。で、話を聞いても、仕事内容がよくわからなくて。「とにかく一度来て」って…ね(笑)。

なる美 (笑)

miho 最初は見学のつもりで、ほんとにただ楽しく話してくれたらいいって言われて。

白川 それがどんな形で今に続いていくんですか?

miho そこから、私が参加する前に行われたインタビュー記事を編集したり、その後もインタビューを何度かさせていただいて、今に至ります。

miho合流後、初めてのインタビューは尾藤雅士さん

白川 そうなんですね。最初はお願いされたということですけれど、それでも今に至るまで続けてこれて、今日も来ようと思ってこの場にもいるのは、自発的意志ですよね。どういった気持ちがあったんでしょうか。

miho なる美は、大学時代から結構色々なことを誘ってくれていました。ボランティアだったり、イベントだったり、英語の教室のお仕事もあったよね。

なる美 あ、英会話教室のね。助っ人で来てもらったね。

miho 私はそれがいつも楽しかったし、すごく刺激をもらいました。paletteでも、いろんな業界の方の生い立ちとか、人生観などの深い話を聞けるので、本当に刺激的です。「こんなに自由に楽しそうに生きてる人達がいるんだ」っていう発見にもなるし、自分の価値観に影響されることも多いです。さっき(第1部)の“社会”の話もありましたけど、自分の社会の中では、会うことがなかったであろう人達との出会いが、とにかく新鮮で楽しいと感じています。

白川 昔から色んな人と出会ったり、話を聞いたりすることに興味があったんですか?

miho そうですね。昔から「人との出会いって面白いな」と思っていました。あと、文章を編集する仕事にも興味がありました。育児でなかなか時間が取れなくて、思うようにはできていなかったんですけど、子どもが成長してちょうど手が空いてきたタイミングで声を掛けてもらったので、「いい機会だな」と思って参加させていただくことにしました。来年から子どもが年少になって、保育園に預ける時間が長くなるので、もう少し時間がとれると思うので、より一層頑張りたいと思ってます!

白川 やる気満々ですね!なる美さんとしては、大学の頃からずっと誘う関係でいたということなんだけど、誰でもいいという訳じゃなくて、この人だからという理由があったと思うんですけど、どうですか?

なる美 そうですね。それはすごくあります。mihoは、「私なんて」みたいな感じで自分のことを言うんですけど、全然そんなことはなくて、人柄もすごくいいし、友達からも信頼されてるし、仕事のやり取りも誠実に対応してくれます。学生の頃からそうです。インタビューの経験や実績を気にして不安そうでしたが、それよりもインタビューの場でmihoが楽しんでくれているかが一番大事だと思っています。それって相手の方にも伝わることなので、特に大切にしています。また、いるだけで場を調整してくれるようなタイプなので、そういう点でもすごく良い人に声を掛けたと思っています。

白川 今日もそうだけど、インタビューの場では、調整、調和してくれる存在ってやっぱり貴重ですか?

なる美 そうですね。“調整”というのはなかなか言葉で言うのは難しいんですけど…。

白川 雰囲気が良くなるとか、和むとかそういうことですか?

なる美 和む…?うーん、否定するとおかしな話になっちゃいますけど(笑)。深い部分で、場が良い雰囲気に保たれるような…そんな感じですね。

白川 すごく信頼感が伝わってきます。だから誘い続けているのだと思うし、やっぱりなる美さんにも、この人に関わってほしい、仕事を一緒にやりたいという気持ちがすごくあるんでしょうね。

なる美 そうですね。

白川 それぞれが楽しんで仕事をするということを考えたときに、適任だったということですね。

白川 岩田さんはいつから関わり始めたんですか?

岩田 2019年…?

白川 そうなんですね。

岩田 当時僕は、大府市に住んでいる子ども達を主人公にした、大府市の市制50周年の映画を作っていました。その大府市に3.11(東日本大震災)で被災した方が何世帯住まわれているかを調べていたんです。

白川 映画の作成の過程で調べていたんですね。

岩田 そういう設定の登場人物を書いたんですけど、大府市役所の方を通じて、いろんな方に連絡をしていった最後の到達地点がなる美さんでした。

白川 なるほど。

岩田 紹介してもらって、ちょっとお会いしてお話できませんかっていうのが2019年だと思いますね。

大府市市制50周年の映画『スイッチバック』の予告編

白川 じゃあ、最初は映画撮影の作成過程で繋がるべき人を探していて、出会ったということなんですね。それが、paletteにどう繋がっているんですか?

岩田 それで、なる美さんがこういうことをやりたいとずっと思っているという話を、映画が終わった日なのか、いつだったか話した記憶があって。僕もいきなり連絡して情報をもらったりしていて恩返しもしたかったので、「手伝いますよ」って言っちゃって(笑)。

白川 言っちゃって(笑)。

岩田 っていうのは冗談で(笑)。なんか壮大なことを考えているなということで、「できることがあれば」っていう感じでやらせてもらったのが始まりだったかと。

白川 2019年だと、今からもう結構前ですよね。4年前ですね。

なる美 そうですね。

白川 まさにpaletteを始めようっていう時期ですか?

なる美 いや、まだ全く形のない時ですね。最初にお会いした時にその話をしたことは全然覚えてないんですけど、次に私からお誘いして会った時にお願いをしたんですよね。でも、初めて会った時は震災に関する話をしていて、ただそれだけの関係なのに、なぜ私が岩田さんに連絡を取ろうと思ったかは…謎ですね(笑)。

岩田 そうですね。会ったの2回目でしたよね。

なる美 当時の私のことは覚えていませんが、最初にお会いした時に受けた岩田さんの印象はよく覚えています。「東日本大震災の話が聞きたい」と言う人は、メディアの方か、ボランティアに行きたい学生が多いんですね。ボランティアの学生は、「どうしたら現地に繋がりができるか教えてください」っていうお話が多くて、メディアの方は「ネタくれ」っていう姿勢を感じちゃうんですよね。でも、岩田さんは全然違って、「学ばせてほしい」という思いが強く伝わってきました。丁寧で誠実な方だなという印象でした。

白川 何を学びたいというお話だったんですか?

なる美 大府市に避難されている方はいるのかということや、その方たちの状況ですね。

岩田 自分で物語を書くから、なるべく現実に沿ったリアルな話を書きたいので教えてくださいと。でも話せないこともあると思うので、そこは包んでもらっていいのでっていう感じだったと思います。

白川 2人をつなぐキーワードは“東日本大震災”で、それぞれの活動フィールドの中で辿っていった時に出会ったご縁が今に繋がっているんですね。とはいえ、3年も経っているじゃないですか。自分の本業もお忙しく、それこそ今日も映画の編集もしなきゃいけない中で、それでもなお今日ここに来てくれているということですよね。どういった思いでここまで続けてこれたんですか?

岩田 mihoさんと一緒で、全く知らない人の話を聞けるということは、まず単純に面白いです。歳を取ってくると、人間関係が凝り固まってくるじゃないですか。僕もあまり外交的ではないので、そういう機会はなかなかないです。数か月に一回、知らない人の話を聞く場として楽しんでいるというのが一つです。あと、やっぱり、なる美さんの独特な魔力ですかね。

白川・なる美 魔力!(笑)

岩田 引っ張りすぎず、離しすぎずっていうのを、考えてやってくれているような気がするので、それで保てているのかもしれないです。人間的な魅力もあるので、手伝えることは手伝っていきたいという思いもあります。あと、東海3県で活動している方々のインタビュー映像を、仮に10年ぐらい続けたとしたら、結構膨大な量になりますよね。それはそれで、貴重な映像になるんじゃないかということで、その点でも面白いと思っています。

白川 本業では映像も撮られるので、貢献のしどころもあるかなっていう思いもあるんですね。

岩田 そうですね。自分のことに繋げられる機会もいつかあるだろうというかんじです。例えば面白い人がいたり、特徴のある仕事をしている人がいたら、映画を撮るときに話を聞きに行くこともできますし、題材と言っては失礼ですけど、題材の一つとして参考にもなります。僕のメリットも考えながら続けています。

白川 それも大事ですよね。paletteが目指しているところに対しての共感もあるし、それをやりたいと言ってるなる美さんへの関心も相まって、一緒に活動しているんですね。多分どっちかだけではないんですよね。人物的に魅力的だけど、中身が伴わないと続かないし、逆にどんなにいい内容だと思っても、この人とは不安だなっていうものもやっぱり続かないし。どっちもあるから続けてこられるというのがすごくあるかなと思いました。

インタビュー終わったら、さよなら…って

白川 これまでのお話でそれぞれの人間的な繋がりが少し見えてきました。ちょっと寄り道しちゃうんですけど、当初の出会いの時と比べて、今はどんな風にお互いを見ていますか?どうしてほしいとかはありますか?

なる美 うーん。一概には言えないですね。あまり変わらないかな…。どうしてほしいかを言うなら、2人ともあんまり遊んでくれないので…もっと遊んでほしいですね(笑)。

白川 遊んでほしいんだね(笑)。

なる美 paletteをどうしていくかをもっと一緒に考えたいです。話すとしたら、この2人しかいないんですよね。paletteをどういう風にしていきたいか、社会の中でどう生かされていくかとか、そういう話を雑談の中で話したいタイプなんです。岩田さんは、本業のお仕事がいつも忙しそうだし、mihoも子どもが小さいので、みんなで飲みに行きたいけど、行けないなぁ…とか(笑)。

白川 3人で一緒にいる時間をもっと取れたらいいなっていう感じ?

なる美 そうですね。場所や場面が違えば、話す内容もそれぞれの見せる面も変わってくるので、お互いのことをもっと知れたらいいなと思って、もっと時間を共有できたらいいなと。

岩田 ほとんど話したことないもんね(笑)。

白川 そうなの?!それは衝撃的!

なる美・miho そうそう(笑)。

岩田 インタビューする時には、取材対象の方をみんなで囲むんですけど、終わったら、ね?

miho さよならって(笑)。

白川 なるほどね。インタビューする方に対しては矢印向いているんだけど、お互いについてはよく知らないんですね。

岩田 ついさっき、mihoさん尾張旭市にお住まいなんだって話をしたくらいで(笑)。

白川 そうか(笑)。でも、今隣に座っているわけだし、どんな風に感じられているんですか?

岩田 そうですね、いるなぁってかんじです(笑)。

miho いるなぁって!(笑)でも、私も撮ってくださっているなぁってかんじです(笑)。

白川 まだよそよそしい感じがあるんですね!

岩田 そうですね。でも、なる美さんが言っていたように、来ている人によって場の雰囲気って変わるので、mihoさんが入られてからは明らかに変わったなということは実感しています。

白川 チームとしての雰囲気はちょっとレベルアップしている?

岩田 種類が変わったなというかんじですね。

なる美 それは私もそう思います。

白川 mihoさんは、岩田さんのことはどういう風に見えていたんですか?

miho 最初になる美にpaletteについて教えてもらった時に、岩田さんのインタビュー記事が既に掲載されていたので読ませていただいたんですけど、「すごい方なんだな」っていうのが第一印象です。なる美も岩田さんも自分の仕事にプライドや目的を持ってやられてる印象だったので、その2人の中に訳わかんない私が入っちゃっていいのかなって恐縮しちゃっていましたね。

白川 最初は比較したりとか、自分とはちょっと違うかなって思っていたんですね。

miho そう、周りに監督さんっていう職業の方がいなくて。

なる美 普通、いないと思うよ(笑)。

miho どういう人生を送っていったら監督さんになれるのかっていうのも分からないし、“未知な方”という感じでしたね。

白川 今まで出会ったことがない人なんですね。

miho プロ仕様の機材も初めてみました。尊敬です…。

岩田 いやいや…。

白川 会話内容が本当に出会いたてなかんじですね。

なる美 自己紹介したかしてないかくらいですね。

miho なんだかすみません(笑)。

なる美 でも、2人とも察しが良いので、1回のインタビューを終えて、「多分この人はこういう人だな」っていうのが分かっているような気がします。お互い喋ってないものの。mihoは「岩田さん、面白い方だよね」って言ってるし、岩田さんからは、mihoは調整してくれる人だという話に同感をもらっています(笑)。

白川 なる美さんを通して印象を聞くんだね。

なる美 でもmihoに考えてみてほしいんだけど、私と岩田さんの2人でインタビューしたら、なんか怖いじゃん?真面目すぎる2人で。

miho そうか、そうか(笑)。

なる美 そういう回が1回だけあったんですけど、mihoにいてほしかったなと思います。

白川 そうなんですね。今まさに関係性を作っている最中ということが分かりました。なる美さんは「この2人がもっと話せたらいいなぁ」という風に、気負ったりしませんか?

なる美 気負うことはないですね。話してくれるといいなとは思いますけど、そういう機会が必要だとも、2人がそれを必要としてるとも思ってないですね。「チームになるといいな」とは思いますけど、現状は私が決めたことをお願いしている感じです。正直、私としてはどこまで相談していいのかっていうところもありますが、そこはお互いが求める距離感でいきたいと思っています。そんなに引き込まれたら困るっていうのもあまり言ってくれないだろうから。

白川 察しのいい2人だからね。

なる美 そして優しいので。そんなに引き込まれると困るってことがあったら、できれば言ってもらって調整しながらやっていきたいですね。

白川 察するのもいいけど、言葉が欲しいときもありますね。

なる美 そうですね。今のところはこんな感じでやっていますけど、これからもっとpaletteとして一緒にやることが色々出てくると思うので、その辺のすり合わせはしておきたいですね。

その後、2024年の年始に波入重樹さんのラ・マンチャにて飲み会が実現しました!

大事にしたい“その人らしさ”、映像とどう向き合うか。

白川 現状の活動としては、なる美さんがある程度活動の方向性を決めたり、作業を振り分けてお願いしたり、ということが想像つくんですが、それぞれがどう感じているのか、まさに、このpaletteの活動を今後どうしていきたいかという話をしたいと思います。

白川 まずは表現方法についてですが、現状は、インタビュー記事の文章に加えて、映像も撮るという方法で発信していますよね。文章の表現って世間では今のところ結構溢れているので、そういった価値に触れて話してもらってもいいですし、どういう映像だったらいいと思うかなど、それぞれがどういう風に思っているのかを共有したいと思います。立ち上げたときの思いが強くあったり、プロとして映像を撮る側からのアイデアがあったり、読み手側に近い感覚での意見があったり。それぞれの立場から思うことを教えてください。

なる美 実は今、まさにそれを考えているところです。最初は、記事が3ページに分かれるので、映像もページに合わせて合計3本作っていましたが、なかなか大変な作業量で、そこから「どうしよう?」で止まってしまっています。

白川 確かにすごく時間がかかりそうですね。

なる美 映像の目的に立ち返ると、文字だけでは分からない“その人らしさ”や“人柄”を伝えたいというものなので、3本じゃなくてもいいし、短くてもいいんです。“その人らしさ”を伝えるのに、どういう風にやるのがベストなのかなと模索しています。例えば、「人生って何だと思いますか?」「散歩です。」キラーン!みたいに、切って張って綺麗にまとめちゃうと、キラキラのYouTubeみたいになってしまう。そういうものを作りたいわけではないので、皆さんの知恵をお借りしたいなと思っています。

白川 “その人らしさ”が伝わる方法として、文章も当然大事だし、そこでそぎ落とされてるかもしれないものが映像で補完されたらいいなというアイデアだということですね。

なる美 そうですね。一つのインタビューに1時間半から2時間かけていて、長いので。編集は岩田さんやもう1人手伝ってくれている人がやってくれていますが、結構大変なんですよね。

白川 岩田さん、どうですか?

岩田 観る側に立った時にどういうものが観たいかで考えると、僕の場合は、10分の映像×3本は集中して見れないと思います。そういう風に観るものじゃないと思いますし。YouTubeのような消費のされ方を考えると、ノーカットで1時間半ぐらいの長尺でラジオみたいにアップするのがいいのかなと思いますね。

白川 なるほど。

岩田 相づちの打ち方や、話している時の目線の動きなどで、“人となり”が分かると思うので。逆に言うと、分かり過ぎちゃって映したくない部分まで映っちゃうという話もありますが、僕としては、なるべくノーカットで表現する方がいいかなと思っています。あとは、編集が凄く大変で時間がかかるので、これを継続していくには、ビジネス面も含めた生産システムを作っていかないといけないなとは思います。本業もあるので、作業量によっては、僕がやるのかやらないのか、他の人にお願いできるのかとかも考えたいですね。

なる美 そうですね。ラジオ的なのも良いと思うので、やりたいのですが、インタビューされる側としてはずっと動画に撮られていて、それをそのままアップしますと言われると、喋りにくくなっちゃいそうで…。

白川 そうですね。

なる美 そういうのは撮りたくないんです。“その人らしさ”を表現してもらえる空気を作りたいので、そのままアップするっていうのはやりづらいと思っています。YouTubeでもラジオ的なものがありますけど、画像のないラジオみたいな感じであげるのもありかなと思いますね。

白川 ある意味、視聴者ファーストというよりかは、インタビューする方にちゃんと向き合って“その人らしさ”が出るというのがまず大前提で、それが見ている人たちにも伝わることが大事という感じなのかな。

なる美 優先順位としてはそうですね。

白川 やっぱりそこに対しては文章だけではなくて、息遣いとか間とかって話もあったけど、映像は欠かせないであろうという感じなんですね。

なる美 映像は欠かせないですね。

miho 映像は必要だけど、そのままでも編集をしすぎても、インタビュー対象者の“その人らしさ”が失われてしまう…難しいですね。

白川 難しいね。他に“その人らしさ”を伝えられるような方法は何かないかな?

なる美 うーん。あまり良い方法だとは思わないんですけど、例えば1分にまとめるとか。自己紹介の部分や盛り上がった部分をまとめるっていう方法もありますね。

白川 やっぱり文章だけじゃなくて、映像を載せたいということだね。文章と映像が当たり前に共存すべきというメディアは一般的には珍しいかもしれないですね。mihoさんは、paletteで映像を出すことに、どういった価値を感じていますか?

miho 文章を編集していてすごく思うんですけど、誰でも独特な言い回しとか言葉や話し方の癖があって。編集するときは、どうしても話し言葉は書き言葉に変換するし、文章としてある程度簡潔に読みやすくしちゃうので、やっぱり何らかの形で映像もあった方が“その人らしさ”が伝わりやすいのかなと思いますね。

なる美 映像から得られる情報は多いですよね。

miho さっき言ってた1分のダイジェストみたいなものは、オープニングとか導入的な意味合いで、短い映像があってもいいかもしれないと思いました。そういうのがあると、最初に映像を見て、こんな雰囲気の人なんだっていうのが分かった上で、文章を読んでもらえるかなと。今は映像がwebページの一番下にあるので、一般的な視聴者からすると、文章を読んで、映像をみる流れになりがちだと思うので、文章から映像まで全部を見てもらうのは難しいのかなと思います。

なる美 最初の導入的な位置づけにするというのも有りだね。

白川 映像の位置、webページの魅せ方なんかも、考える余地がありそうですね。やっぱり“その人らしさ”という言葉が何回も繰り返されていますが、料理に例えるなら、素材の味を生かすじゃないけれど、すごいデコレーションして「おいしいだろう!」みたいに盛らない見せ方が大事だという共通認識があるんですね。

なる美 面白い例えですね。そうですね。

白川 音声と映像で比べてみると、音声で得られる情報でも“その人らしさ”を感じることはできるけれど、表情とか仕草に関してはやはり映像の方が情報としては強いので、音声より映像の方が望ましいという価値観でしょうか?

なる美 私はそうですね。人の仕草って様々で面白いので。例えば、相槌の仕方って中国人と日本人では違うんですよね。

miho そうなの?!

なる美 カナダで車で走っている時に、通行人を「日本人かな?知り合いかな?」って思って見ていると、首の振り方で「違うな、中国人だな。」と分かるんです(笑)。もちろん同じ日本人でもそれぞれ全然違うから、映像だと“その人らしさ”が伝わりやすい気がします。

miho 確かに、歩き方で誰か分かったりするもんね!

白川 仕草というのも、大事な“その人らしさ”のシグナルなんですね。岩田さんもそんな感じですか?さっきのラジオ的な動画という話もありましたが。どうでしょうか? 

岩田 文章を書いている2人には申し訳ないですが、今は絶対映像の時代だと思うんですよね。だから、文章もあるけど、映像でも見れるよというところで両方あった方がいいと思います。時代的にも見られ方としても映像は欠かせないんじゃないかなとは思いますね。

なる美 そうですね。

岩田 “その人らしさ”で言うと、1分だと“情報”という見られ方になっちゃいますね。SNSでも今はパパパッと効率よく圧縮して見るっていうっていうのが主流で、それは映像の本来の姿ではあるんですけど、その反対がノーカットのドキュメンタリーですね。圧縮してしまうと、情報としての側面が強くなっちゃうんですよね。

なる美 そうですね。

岩田 でも、見せたくないところも含めて、見えすぎてしまうというのであれば、妥協点としては、NGなところだけインタビューした方に決めてもらったり、こちらから挙げたりして、そこをカットして、40~50分ぐらいのやつをYouTubeにまとめるとかですね。プレイリストで10人分ぐらいあると、聞く人も「通勤の時に聞いてみるか」っていう気持ちになってくれるかもしれません。paletteへの足の運ばせ方の一つとして、そういうルートは用意するのもいいかなと思います。

白川 なるほど。映像は、やっぱり今っぽいですね。文章だと、映像でそのままの時間、つまり生の声を聞くよりかは、早く読めるメリットもあるけれど、映像でも、ある程度の部分を抜き出すのであれば、注目してほしいポイントにフォーカスして、編集の仕方によってはなるべく生の情報に近い形で見れますからね。タイムパフォーマンスっていう言葉もあるぐらいですからね。

なる美 “タイパ”ね!

白川 映像や映画を倍速で見たりとかね。時間に対して効率を求めるということもあって、映像との付き合い方も少しずつ変わってきてるような気もします。

なる美 分かります。なんか…“タイパ”って、寂しいですよね。

白川 なんかね。

なる美 つい先日、ラジオを聴いてたら“タイパ”がトピックになっていて、パーソナリティーの方が、「1分で映画をまとめたやつを見て、映画を観た気分になるんですよね」って言ってて。どう思いますか?

岩田 それは反対ですね。情報を食ってるだけでしょって。観てるようで観てないみたいなかんじ。

なる美 そうですよね…!“情報を食う”って表現が面白いですね。情報を入れる、ストーリーだけを追う、ということになっちゃいますよね。

岩田 そうですね。映像表現って本来はタイムパフォーマンスめちゃくちゃいいはずなんですよ。2時間でキャラクターの人生を描くっていうのは、ものすごくぎりぎりで作って、詰め込んで、工夫してやっているんですよね。だからやっぱり、映像に対しての付き合い方が変わってきているとしか言いようがないですよね。

miho 今は、誰でもいつでも気軽に観れるのはもちろん、撮る側にもなれますもんね。

岩田 やっぱり“タイパ”とかそういった概念が生まれたのは、スマホが出てきたからだと思います。よく言われますけど、元々は映画が上映される場所って映画館しかなくて、映画館は一回入ったら早送りも巻き戻しもできない完全支配的な場所で、観る側は受動者として行くんですけど、スマホだとそれが真逆で、自分で止めるも早めるも一瞬で判断できるんですよね。

miho DVDとかビデオも昔からありますけど、飛ばすとしてもせいぜいチャプター選択するくらいですよね。倍速もできないし。スマホだと手元で簡単に操作できすぎちゃうから“タイパ”という概念が生まれたんですね。

岩田 でも、実際は僕もタイパ側だとは思いますけどね。

白川 タイパ側!面白いですね、タイパ側と非タイパ側。

岩田 時間を効率的に使うってのはめっちゃ分かりますからね。例えば、Amazonめっちゃ使いますし。

白川 結局どんなメディアでも、切り取りをしていると思うんですよね。なるべくそのままの情報とは言っても、さっきもmihoさんが言っていたように、文章表現という制約から言い回しを少しいじるということもあるだろうし、映像でも、録画する前後のくだりとか、何らかを切り取ったり、編集したりが必ずあるんだろうなと。

なる美 そうですね。伝えたい情報次第で編集は必ずありますよね。

白川 “タイパ”という話になると、受け手が自分のニーズに応じて、発信者が意図しない形で情報を享受することを可能にしちゃうので、これはだいぶ違うことだと思っていますね。発信者がどんなに“その人らしさ”を発信しようと苦心してやったとしても、受け手側がそういう気持ちじゃなかったりすると、動画だったら倍速にして情報を自ら加工して、そのまま取り込めてしまうから、発信する側が伝えたかったこととの食い違いもあるんだろうなと思います。

岩田 そうですね。ただ、ビジネスにしていくとしたら、そこに向き合わざるを得ないと思います。

palette 社会の課題解決に貢献していきたい

白川 今後paletteはどこへ向かっていくんでしょうか。

なる美 今は“東海エリアの人専門のインタビューサイト”ということでインタビューのみをやっていますが、始めた目的は多様な価値観を持つ人達が繋がると、社会に変化が起きて、社会の課題解決に貢献できるかもしれないっていう思いがあるんですね。その目的からすると、インタビューをして多様な価値観を掲載していきながら、オフラインの会などを通して緩いコミュニティができていくといいなと思っています。

白川 オフラインの会というのは、paletteを応援したい人や、今までインタビューをした人とか、ここにいるメンバーとかがわいわい交流する場ということですか?

なる美 そうですね。“パートナー”というpaletteの会員になってくださっている方や、インタビューさせていただいた方とかが集まって、繋がっていけるといいかなっていうのはありますね。

白川 なるほどね。オフラインも使って、人と人との繋がりを育んでいくメディアという感じですね。

なる美 そうですね。続けていくと、本当に変化が起きると思っているので、社会的なことを一緒に考えてくれる仲間も増やしていきたいですね。

岩田 何か大きめなプロジェクトをやってもいいんじゃないかなって思います。オフラインという話がありましたけど、今はweb上でしか存在していない雰囲気があるので、実体を世間に伝えるのはいいですよね。

なる美 そうですね。まずは記事10本と思ってて、今10人目が終わっているんですね。なので、10本とこの会の記事を公開して、オフライン会ができるといいなっていう妄想はあります。

白川 岩田さんが大きいプロジェクトをやった方がいいっていう話でしたが、paletteとしてやりたいことがなにかあるんですか?

岩田 やりたいことでいうと、具体的には、僕じゃなくて、なる美さんがやりたいことが多分あると思うので、やったらいいと思っています(笑)。セーブしていることがありそうだし、アイデアもあると思うので。

なる美 おぉ(笑)。大学生の頃からイベントを作ることは多くて、「みんな集まって〜!」というやり方が多かったのですが、paletteに関しては、ゆっくり積み重ねている感じですね。paletteらしいやり方を見つけたいですね。

白川 岩田さん的には、もっと爆発力があってもいいのにっていうことですかね?

岩田 そうですね。もっと無茶していい!

なる美 無茶!(笑)

白川 今のpaletteを否定するわけじゃないけど、「もっと自分らしくなれるんじゃない?」っていうことですかね。セーブしてない本来の違う姿があるんじゃないか、とか。

岩田 そうかもしれないです。

miho なる美ならもっとできるよってことですかね。今はwebサイトの中だけなので、人と人を繋ぐ場であるということは読者にはなかなかわかりづらい気がしています。paletteとして見てる未来や、やりたいことが伝わりにくいと思うので、実際に人と人を繋ぐ場という意味でオフライン会はすごくいい案ですね。

白川 web上だけでは、人と人を繋ぐ場だということが伝わりにくいということですね。

miho 既にpaletteを通して人と人との繋がりができているんだよと、以前話をしていたよね。

なる美 ウクライナ避難民の支援でね。一時的な居住場所を探していて、商店街に伝手がある尾藤さんから、商店街の方を紹介してもらった話だよね。

miho そうそう。インタビューを続けた先に、paletteを通して人と人との繋がりができて、相乗効果でこんな影響があったよ、みたいな例が伝わると賛同してくれる方も増えてくるのかなって思います。

白川 今までのインタビューで既に芽が出始めているものもあるんですね。

miho インタビューをした深尾さんとなる美が、仕事で偶然同じ場に居合わせたっていう話もあったよね。そこでまた新たな会話が生まれて変化が起こったりするのかなと。一般的には、人にインタビューをしていくことによって、社会に変化が起こることって想像しにくいので、それがもっと伝わればいいのになとは思います。人との繋がりってこんなに社会を変えられる凄い力があるんだよって。

白川 “場”という話がなる美さんからも出ていたけど、要はインタビューに臨むその当日が、その人から情報を引き出す場ということだけではなくて、“出会う場”であって、出会い方としてその人にインタビューをする日だった、ということが伝わってきますね。そして、その人との出会いの場は自分らしさが溢れるような時間になればいいっていう価値観もすごく伝わってきました。でも、それが今はただ“情報を発信してる人たち”っていう認識のされ方で、「この人がこういうことを考えているんだよっていうのをそのまま素材のままで提供したい人なんでしょう」っていう風に思っている人が大多数かもしれなくて、それだとpaletteの思いとは結構かけ離れているように聞こえちゃうかもしれないですよね。既に芽が出てるのであれば、それが分かりやすく伝わってほしいということですね。

miho まとめをありがとうございます。その通りです!

岩田 “オフラインでみんなで話そう”という対人ではないことで、他になにかアクションができないですかね?社会っていうと大袈裟なんですけど、現実のものに対してアクションをするということですね。でかい樹を切るとか、そんな雰囲気の話なんですけど。

なる美 それ私もいいなと思います。例えばボランティア募集のページを作って、paletteに関わる方と一緒に作業をするとか。共通の目的に向かう共同作業は、友達や仲間を作るのに一番有効だと思います。さっき(第1部)の大曽根の話もそうですけど、“仲間”っていう意識が生まれるためには、一緒に活動や作業する場はすごく大切ですね。樹を切るのも、植えるのもいいですよね。

岩田 あ、切っちゃだめか(笑)。

なる美 いえ、切ったほうがいい樹もありますから…(笑)。

白川 それを聞くと益々、願っている未来に対して、paletteのwebサイトがどういう意味があるのか、人との繋がりをすごく大事にしているpaletteが、このwebサイトをどうして必要で大事だと思ってるのかということが分かると、読む側にとっても、「そういうことだったのか!」と意図が伝わるのかなと思いますね。

岩田 まずはpaletteを象徴するような、会話ベースじゃないインパクトのある何か、特に記録に残しやすいことをしたらいいかなと思います。

なる美 なるほどね。

miho 私たちの思いが伝わるような何かをしたいね。

白川 みんなで一緒にできること、paletteを象徴するようなイベント、実現を楽しみにしています。まだまだ話足りないこともありますが、そろそろ時間が来てしまいました。短い時間でしたが、ありがとうございました。僕も楽しい時間でした。

その後、2023年8月にオフライン会が実現しました!