「この魅力的な人を、どうやったら伝えられるかな」

―ちなみに私の義理の実家が建具屋さんなんですが、そういう職人さんともツアーを企画していますか?

建具屋さんって、自分の家をリフォームするとかじゃない限り出会わないですよね。建具屋さんの仕事を見ると、“形にしていく仕事”って職人さんの強みですよね。でも、「この部分はちょっと今の時代には合ってないのかな」と思うこともあったりして、それは結構率直に言っちゃったりしています。

―そうなんですね。相手の気付きにもなりそうですね。

そうですね。ツアーがまさにそうで、職人さんは“作る”ことはプロなので何も問題ないんですけど、“伝える”とか“人に聞いてもらう”、“知ってもらう”ことに関しては、「あまりやってきてないのかな」と感じることがあります。そこに僕らが入って、職人さんの持っている熱が下がらないように伝えるためには、「どういうコミュニケーションが大事なのか」と話し合ったり、伝えるようにしています。

―なるほど。その辺は、結構突っ込むんですね。

「話を10聞かされるよりも、1の体験をさせてあげた方が興味を持ちますけど、どんな体験できますかね?」と聞いたら、「こういうことはできるけど喜ばれるのかな…。」という返事があったりします。すごくいい体験なのに、意外とやってる本人がその価値を分かっていなかったりすることがあります。工場の人だと特に「汚いから」とか、「汚れるから」と言うんですけど、参加しに来る人って汚れたくて来ているので(笑)。

―汚れると分かって、自分で選んで来ているわけですもんね(笑)。

そうそうそう!わざわざ来ているので、綺麗に整頓されたクリーンなガラス張りの無機質なところよりも、匂いを感じられるとか、経年変化が見られる所とか、そういうところにストーリーを感じたくて来ている人たちが多いので。そういうことをちゃんと伝えてあげられているといいと思っています。ツアーをやっているうちに、「そういうコミュニケーションをしたら喜ばれるのか!」と気付くと、ツアーの質もどんどん良くなっていきます。

―お客さんの気持ちが分かると、ツアーの質も変化するんですね。

今は年間300回もやっていて全部に行けないので、スタッフとシフト制でやっている場合もあるんですよね。それで、5年前に一番最初にやったツアーのガイドさんに久しぶりに会ったら、めちゃくちゃ上手になってて、資料もすごい増えてるし、「どうしたんですか?」って聞いたら、「成長したでしょ!」って言われて(笑)。「すごいっすね!」みたいなことも(笑)。

―おぉ〜!アイドルの子たちがどんどん綺麗になってくみたいな!(笑)

そうそう!人に喜ばれることって、誰でも嬉しいと思うので、「喜ばせたい」とか「何ができるのか」と考えて、自分で磨ける人達はどんどん良くなっていきますね。僕らもそうかなと思います。「この魅力的な人を、どうやったら他の人に伝えられるかな」と、まず考えたりするので。

―そういうプロデュース力も必要ということですね。

そうですね。かっこよく言えばプロデュースかもしれないですけど。

―ブランディングという言葉もありますが、しっくりこなさそうですね…?

そうですね(笑)。でも、人によって色んな魅力やストロングポイントがある中で、その“1つ”を「すごくいいと思いますよ」と率直に伝えたり、それを引き出せるように意識していますね。

―そういったことを日々積み重ねてツアーができているんですね。

そうですね。アメリカで大学生だった時、本当に色々な奴らがいて、日本人だと共通テーマや話題がなくてもずっと話せるけど、いろんな人種がいて、でっかくて、奇抜なファッションをしてる奴と、何からしゃべっていいかわかんなかったんですよね。でもその時に、「どこに共通点があるんだろう」とか「何の話なら“面白い”と、一緒に肩組んで盛り上がれるんだろう」ってことを探す癖がついたと思います。良い所を探すというか、「絶対何かある」と思ってコミュニケーションを取ってましたね。

―アメリカでの経験がコミュニケーションに活きてるんですね!

大学2年間でついた癖が、サラリーマンをやっていた時も役に立ちました。クライアントさんに「うち給料これだけしか出せないから、他の会社にいい人材取られるよね」と言われたとしても、「給与はそれだけかもしれないですけど、この部分ならできることはあるのではないでしょうか」としつこく聞いていくと、 「それって意外と他の会社にできないことですよ!」ということが見つかります。そうやって何かを見つけてあげて、そこを前に出してあげると、「そういうことをやってみたかった!」という人が来て、採用がうまくいったりとか。

―1人であれ、会社であれ、必ず長所があるはずだ!ということですね。

出会ってきた人達、みんなすごくいい人達で素晴らしいので、それをちゃんと認めてあげて、まあプロデュース…ですかね?(笑)

―上から目線のプロデュースではなく、対話の姿勢を感じます。そして、こういう時に照れ笑いをするようなところが、上手くいく秘訣なのかもしれないですね。

そうかな(笑)。大前提として、その人はもう既に“100点満点”だと思ってるから、その人の等身大の格好良さとか可愛らしさとかをそのままお届けしてあげるということですね。そういうスタンスは仕事でもプライベートでも変わらないです。

―既に“100点満点”!素敵ですね。既にあるものを活かすということですね。

ウクライナに悶々 少しでも行動することで関心が広がる

今、ウクライナの話がありますけど、僕は今、すごく悶々としちゃってて…。ネットニュースでは、批判や書き込みもたくさんあるけど、「じゃあ自分ってどう思ってんの?」みたいなことをたくさん考えています。考えることが大事だし、知ることも大事だけど、「それってウクライナの人達のためになってるのかな」って。まだ何かできることがあるんじゃないのかと思うけど、現地に行くことはできないし、武器を持つことも違うし、ロシアを批判することも違うし…。

―ウクライナ、悶々としますよね。できることって何だろうと思います。

でも、そう考えるとできることってそんなにないんですけど、「できることが一つでもあるならやってみたいな」と思って、昨日色々と調べて、寄付ぐらいしか今のところできないから、「やってどうなるんだ」みたいな気持ちもあるけど「やってみよう!」と思って、寄付してみました。

―寄付、大事だと思います…!

でもそうやって少しでも行動したことで、少し気分が晴れたり、より関心が出てきたりします。逃げている人達の映像を見ると、「あの人達にこの金額が届くのかな」と、テレビの向こう側と自分の距離が少し近くなった気がする。自分の中でアクションを作ったりとか、関心を持つために行動するということは何事でも大事なのかなと思いますね。

―行動、本当に大切ですね。日本まで来れるなら泊めてあげられるのになあとか思います。

そうですね。昨日、名古屋市内にウクライナ人っているのかなと調べてたら、愛知県に何人かいることがわかりました。ウクライナの文化交流とかしてるNPO*が天白区にあって、返信来るか分からないけど、その人にフェイスブックでメッセージをしてみました。
*NPO法人日本ウクライナ文化協会(JUCA)は、現在は名古屋市中区に事務所があります。https://www.facebook.com/npojuca/

―さすがの行動力ですね!

いやいや、何があるか分かんないけど、でも身近にウクライナ人の友達が1人いるかいないかで、また違うと思うんだよね。

―本当にそうだと思います。世界中の人が世界中に友達を作っていけば世界は平和になると、海外のワークキャンプを通して思いました。プーチンさんがキーウ(キエフ)に親友がいれば「何か違うかもしれないのに」とか思います。

そうですね、分かります。自分の経験や体験があると、その思いをプーチンさんに当てることもできるけど、そういうのがないと、ニュースのコメンテーターが言ってることが持論になっちゃったりするので、それってすごく怖いなと思います。

―そうですね。集団心理にもつながりますね。

戦争は許されることではないけども、「なぜそんなことになったのかな」とも思います。同級生とかなら、「おいプーチン、なんでやった?」と聞きたくなりますね。

―プーチンさんの背景も知りたいということですよね。

そう。それも含めて、関心をいかに持てるかということは、すごく大事だと思いますね。

アメリカでのサッカー部“感覚でつながってる”

―加藤さん、アメリカでの大学はなにを勉強していたんですか?

4年生に編入するための学部だったので、リベラルアーツ*というか、何を専攻というかんじではなく、一般教養だったので数学、英語、科学など色々やったという感じですね。
*リベラルアーツ:文法、論理、修辞、算術、幾何、天文、音楽等、大学で学ぶべきほぼすべての学問領域を網羅

―高校がレベル高くなったという感じでしょうか。好きだったものはありますか?

向こうでサッカー部に入ってたんですけど、それが一番学びが大きかったです。

―へー!サッカー部ですか!

僕は、アメリカに勉強しに行った訳じゃなくて…まあ勉強したんですけど(笑)、何かやりたいことがないから新しいチャレンジの場として、「異国の環境の中で暮らすことで、どうなっちゃうんだろうな自分」という興味だけでアメリカに行ったので(笑)。

―“どうなっちゃうんだろうな自分”って…めっちゃおもしろいですね(笑)。

学校にいる以上、ちゃんと成績は収めないといられなくなるから勉強はするんですけど、それを目的にして行ってないから、色んな友達を作ろうと思っていました。英語もろくに話せない日本人がアメリカでど真ん中に入っていっても、クラスの中で人間関係の良いポジションを取れないんですね。カースト*の上を取りたいわけじゃないけど、ちゃんとコミュニケーションを取るには認めてもらわなきゃいけないから、「どうしたらみんなに認めてもらえるんだろうな」と思って。
*カースト:ヒンドゥー教の身分制度を指す言葉

―なるほど、異文化で認めてもらうには?と考えたんですね。

高校3年生までずっとサッカーをやってたから、「アメリカなら自分もサッカーで戦えるかな」と思いました。入学して早々、片言の英語しかしゃべれない時期にトライアルテストを受けさせてもらって、アジア人で初めてチームに入れてもらう事になったんですけど、そこからがすごく良かったですね。英語を話せなくても1人の人間として認めてもらうことで、伝えられなくても聞こうとしてくれたりとか、「一緒にジム行こう」と誘ってくれたりとか…それが一番学びが多かったですかね。

―英語ができるできないより、一緒にサッカーをすることで仲間になったという感じでしょうか。いいですね!

そうですね。

―アフリカに行った時、子ども達とサッカーをしてる外国人の男性達を見て「羨ましいな」と思っていました。スポーツってすごいですね。

そうですね。言葉は超えていくのでね。

―どこでもできますしね。

そうそう。つながって、より人が好きになった。アメリカ人もいたし、ヨーロッパの奴らもいたし、あとアフリカや中東系の奴らもいたし、合宿とか行くと一緒に飯も食うし、寝るし。

―人としてつながった感じが伝わってきます。

そう。同世代だからか、英語でしゃべってるんだけど、何語でしゃべってるのか分からないままでもつながってる状態というか、感覚でつながってる時があって、それはすごく気持ちよかった。「言葉とか、そういうことじゃないんだな」と思いました。好きなやつは好きだし、合わないやつは合わないしっていうのを直感的に感じることが多かったですね。

―感覚でつながっているかんじ、なんか素敵ですね!敏感に受け取っていたんですね。

だから、何を勉強しにアメリカに行ったかというと、“人を通じて世界を知る”ということかなと思います。マイクロツーリズムとか地元のことをやってますが、地元のことだけをやりたいわけじゃなくて、日本に興味を持ってくれる日本人じゃない人達にもどうやって楽しんでもらえるかを考えながら、架け橋になることもやっていきたいと思います。

―人をつなぐフィールドがどんどん広がりますね。

そのためには“コア”というか、楽しんでもらう根幹がないといけないと思っています。発信だけにならず、ローカルのスペシャルなことをたくさん用意しておいて、「行きたい」と思った時に繋げられる環境を整えていきたいですね。自分が海外で特別な体験をした時、すごく印象に残ったし、その国のことや地域の方をすごく好きになったから、そういう場を今のツアーからつなげていけると思っています。いわゆる“インバウンド観光”という狭い環境、狭義な感じで見ちゃうとつまらないから、もう少し広げて「何ができるのか」考えながら、温めてます。

―なるほど。加藤さんの“特別な体験”なども盛り込まれていろいろ温まっているんですね。

そうですね(笑)。温めてます。

―加藤さんは、昔からみんなを引っ張るような存在だったのですか?熱田高校でサッカー部だったとのことですが、どういう役割でしたか?ムードメーカー的な?

ムードメーカーではあったかも?あほなことやってたっていうのもあるけど、それこそ人を見て色々考えていました。100人いたら100人のチームメイトがどんな奴かを知ってるような人だったと思います。サッカーが上手い奴らもいるし、なんか下手くそだけどすごく愛嬌ある奴もいるし。サッカーをやってたけど、サッカーだけというよりは、それをしながら色んな奴らといるのが楽しかったですね。

―そうなんですね。その後高校を出て、アメリカの大学に行くって、本当にすごい決断ですよね。

日本のキャンパスライフを知らないから、春になるとみんな“新歓コンパ”とか言ってるの聞いて「何それ!参加したかったな!」って(笑)。

人生は旅。目標はあえて決めない!

―加藤さんは、“人生”って何だと思いますか?

今ツアーを企画する仕事をしてるので、観光業の関係で聞かれた時には“人生は旅だ”と話をしています。旅行ではなくて“旅”ですね。旅行の行程だったらスタートがあって帰ってくる日があるけど、旅は行く日も帰ってくる日も、このワンワールドで広い世界の中で、どこに行くかも自分で決めるし、ゴールもないから、そこに自分の指針というか「こういう旅をしたい」とか、「こういうことを大事にしたい」ということがないと一歩も進めない。迷ったりもするし。その過程で自分が成長したり、出会う人によって人生変わっちゃったりするという意味で、人生は旅だと思いますね。

―なるほど。“旅”は旅行と違って、自分を見つめる機会が多いかもしれないですね。

だから、つまらない旅より楽しい旅の方がいいし、一人で寂しい旅より色んな人が関わって「和気あいあいとできたなぁ」という思い出を作りたい。旅に当てはめてみると、「自分って今どういう岐路にいるのかな」とか、「楽しめてるのかな」と立ち止まって考えられます。

―加藤さんの今は、どういう位置に立っているんですか?

どうですかね。仕事だけじゃない視点からいくと、子どもができたので「次は奥さんと3人で旅に出ようかな」という感じですね。自分と奥さんのことだけを考えれば良かった時から変わって、「この子に元気に生き抜いていってもらうには」と考えないといけないから、どういう環境に身を置いたら安全に育てられるかも考えています。それまで使ってなかった頭を使っているので、すごく楽しいですね。

―確かに、考える内容はかなり変わりますよね。

子どもが小学校2年3年ぐらいになったら、3人で本当に旅しようかなとか、そんなことも考えたりとか。

―わかります。今はコロナ禍でなかなか難しいですよね。

そうですね、楽しみです。不安なことも多いけど。

―お仕事の方のこれからの展望は何かありますか?

今の現状をより良くしていくことと、その時々のタイミングで出会う人とできることを増やしていったり、広げたり深めたりがあるだけなので、あまり展望というものはないですね。10年後こうしたいとか、目標を決めちゃうとそうしなきゃいけなくなっちゃうので、最近はあんまり決めずにやっています。

―“旅”的なかんじですね!

自分の大事にしてること、積み重ねてやってきたことが、「地域や関わる人により還元されるようなことって何だろう」と考えながら、行き着いた先でできることをやっていきたいと思ってます。「人生とは旅である」ですね(笑)。

―いいですね!ご自身の経験をフル活用して、地域や人に還元していきたい、という志は本当に素敵な生き方だと思います。貴重なお話ありがとうございました。

2022年2月28日
コンパル大須本店にご協力いただきました。ありがとうございました!

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