自分が幸せであるために
漢気溢れる令和の侍

住宅や店舗のリフォーム・リノベーション・DIY支援をされている川本和人(かわもとかずと)さん。建築・リフォーム業界で20年以上活躍した知識や経験を活かし、“日本一のDIYマスター”として、YouTubeやメディア出演、教育機関への出前授業等、幅広く活動されています。会社設立のきっかけや挫折のお話、世の中に伝えていきたいメッセージや思いなどを伺いました。(https://kppk-kazoo.com

「やってみたい」を支援する“日本一のDIYマスター”

―自己紹介をお願いします。

川本和人と言います。みなさんからはカズ―(Kazoo)って呼んでもらってます。KPPKという、リフォームとリノベーションの会社をやっています。肩書は、「日本一のDIY*マスター」でございます。よろしくお願いします!
*Do It Yourselfの略。素人が自分の手でなにかを作ったり、住居等の修繕をすること。

お仕事中のKazooさん

―よろしくお願いします!“日本一のDIYマスター”なんですね!

そうなんです。“日本一”なんですよ!

―おぉ~!力強い自己紹介ありがとうございます。聞きたいことがいっぱいです。まずは、リフォームとリノベーションの会社を経営されているということですが、リフォームとリノベーションってどう違うんですか?

一般的な解釈では、リフォームは“修繕”、リノベーションは“付加価値をつける修繕”というイメージですね。住宅で言うと、新築当初が100だとすると、経年劣化で悪くなっていたり、部品が故障したりするので、新築当初100だったものが、80になり、60、40になっていきますね。それを元の100に戻す作業がリフォームです。

―リフォームは新築時の状態に戻すこと、なんですね!

一方で、長い年月暮らしていると、家族の成長と共に段々間取りや作りが生活にフィットしなくなっていきますよね。同じように経年劣化したものを新しい生活に合わせて、110、120になるような付加価値をつけて、間取りを変えたり増築したりすることを、リノベーションと言います。

―なるほど!分かりやすいです。そして、肩書が“DIYマスター”とのことですが、一般的にDIYというと家具や小物を素人が作るイメージですが、リフォームやリノベーションもDIYで行うということでしょうか?

そうですね。お客様自身が施工に参加することを支援してくれる会社や組織ってないよなと思って、弊社では“DIY参加型リフォーム”として、参加される方のモチベーションに合わせてお客様へDIYの指導や支援をしています。お客様にとっても自分で施工できる楽しみもありますし、DIYで施工してもらう箇所は見積もり金額から差し引くことも可能なので、費用の削減等のメリットもあります。

―差し引いてくれることもあるんですね!リフォームやリノベーションをするレベルの高度な専門知識が必要なDIYは躊躇ってしまいますが、プロがついて教えてくれると安心ですし、ハードルもぐっと下がる気がします。会社としては主にリフォーム・リノベーションを行っていて、更にお客様のDIYのお手伝いもする、言わばDIYの先生でもあるんですね!

DIYのイベントの様子

そうです。全部やります!

―DIYマスターとして、どういった点が“日本一”なんでしょうか?

様々な観点からみて日本一ですね!…というか、言ったもん勝ちなんですよ!(笑)

―なるほど!そういうことですね!(笑)

だって、測れます?例えば、ヒロミさんとか森泉さんとか、バッドボーイズの佐田さんとか、DIYで有名な方はいっぱいいますけど、僕が彼らに劣っている要素や、できないことが何かって測りようがないんです。…じゃあ、言ったもん勝ちじゃないですか(笑)。

―確かに…。非常に清々しいお考えです!

でも、大言壮語で言っているわけでもなく、様々な要素を複合的に考えれば、僕は日本一だという自信もありますね!

―すごく男前な考え!カズ―さんに教えてもらえたら、なんでも作れそうな気がしてきました!(笑)

きっかけはなんでもよかった、とにかく独立したかった。

―YouTubeでもDIYマスターとして日本全国いろんな地域に行かれて、活動されている様子を拝見しました!

ありがとうございます!「がってんだ!」というDIY旅番組企画です。それこそ、日本一と言ったのはいいんですけど、一般の方々に僕を日本一だと認めていただくには、何かしら実績が必要だと思ったんですね。名実ともに日本一を達成するために、「何ができるかな?何がしたいかな?」って考えた時に、全国行脚だと思ったんです。各地に行って、DIYでお困りごとを解決しています。(https://www.youtube.com/@kazoo-kppk

―YouTubeでは、どれくらい活動されているんですか?

去年*の夏ぐらいに1本目をあげたので、そろそろ1年経つかというところですね。なにせ全部一人でやるので、仕事をしながらだとなかなか企画も進まなくてですね…。
*取材日時:2024年5月13日

―KPPKの設立も最近でしたよね?

そうですね。2年ちょっと前ですね。

―会社としては、まだ新しいんですね!

はい、そうですね。

―前職はなにをされていたんですか?

大手のリフォーム屋に15年勤めていました。

―そこから独立されたんですね。何かきっかけがあったんですか?

そうですね、ちょうど僕、独立する時は40歳だったんですよ。で、ずっと挑戦してみたいなという思いはありつつも、会社では重要なポストを与えられていて、結婚もしていて持ち家もあるとなると、なかなか腰が上がらなかったんですよね。

―周りへの影響を考えてしまうと、普通はなかなか動けないですよね…。

ちょうどその頃、スーパースター二人が引退を表明したんですよ。
……安室奈美恵とイチローです。

―まさかのその二人…!?(笑)

その二人が引退すると、そして、平成も終わるタイミングで令和になると…。でも、きっと背中を押される何かが欲しかっただけで、きっかけは何でも良かったと思うんです。もう極端な話、「今日めちゃくちゃ星が綺麗だった」とかでも良かったんですよ。

―虹が出ていた、とかね!(笑)

そう!それで「もう今しかない!」って。40歳、イチロー・安室奈美恵引退、元号変わるみたいなところが結構ポイントで、「今逃していつやんねん」というのもあったんですね。その他にもいろんな要素がありまして、実は「うちの会社に来てくれ」って言ってくれていた会社もあったんですけど。

―ヘッドハンティングもされていたんですね!

声をかけてくれた社長も会社も、本当に素晴らしいんですよ。社員のみんなを納得させるために、「自分の役員報酬を削ってもいいから、今より給料を払うから来てほしい」って言われて。

―すごい!熱烈ですね!

一緒に仕事をしたことがなくて僕の実力を知らないのに、なぜそこまで言ってくれるのかが不思議で、ある時社長に尋ねたんです。そうしたら、「確かに仕事ができるかは分からんけど、一緒に仕事したら絶対楽しいことが分かってるから」って。

―そんなに嬉しいこと言われたら、断れなくなっちゃいますね。

それは、すごく感動しました。でも実は、最後はその彼が独立に向けて背中を押してくれたんですよ。ある時、「なんで今の会社を辞めるの?」ってすごく真剣に質問されて。僕は改めて数秒考えたんですけど、やっぱり、やりたいからかな。」って言葉が出てきて。そうしたら、「じゃあやった方がいいですね。」って。「これで君が前の会社に対する不満とかをもし言うようだったら、まだ今の会社でやり残していることがあると思うから、残った方がいいって言おうと思ったんだ」と言われて。

―最後はカズ―さんの気持ちを酌んでくれたんですね。

めちゃくちゃ勇気もらいました。「じゃあ、やろう!」と思って。

―その方は同じ業界の方なんですか?

不動産、建築、飲食、色んなことをやってるグループ会社の社長さんで、友達なんですけど、すごく尊敬しています。

―尊敬しているその方から良い条件を与えられたら、かなり気持ちが揺らいだんじゃないかと思いますが?

うん、でも、やっぱりやりたかったんですよ。独立して自分でやってみたかったんですね。やってないのに、明日死んだらどうしようって、思いました。それなら、やった自分に出会いたいと思って、やりました。

―「独立したい」という気持ちが強かったんですね。ご家族の反応はいかがでしたか?

「どうぞ」って感じでしたよ。「飢え死にしないようにだけしてもらっていい?」とか言われて(笑)。「ああ、この感じ、良かった。」と思いましたね。 

―ご家族も、「いつかはそうなるな」と覚悟されていたのかも?

かもしれないですね。そもそも、前の会社で色々なポストを与えてもらって、自由に動いていた姿を見つつも、働き方とか待遇とか、どこか気になるところもあったみたいで、「やりたいんだったらやりなよ」と言ってくれていました。

―カズ―さんを信じてくれていないと、なかなかそういう言葉は出てこないですよね。

独立してから家族に言われたのは、圧倒的にいい顔してると。独立した方がいいって、家族は最初から分かっていたのかもしれないですね。

挨拶ができない大人たち、リフォーム会社での快進撃。

―リフォーム業界に足を踏み入れた最初のきっかけは?

僕は学生時代、勉強が全くできなくて。定員割れしているような高校に入ったのに、そこで留年して、最下位を取ったりしていたんですね。

―そうなんですか!意外です。

社会のことも何も知らないから、勝手なイメージで、「社会人=スーツを着てデスクワークをする」みたいな、ホワイトカラーの人たちを想像していたんですよ。一方で、僕は学生の頃からアルバイトで建築現場に入ることが多かったから、勉強が苦手だったのもあって、頭より体を使おうみたいな安直な考えで、建築業界を選びました。

―頭より体を使おう、の選択だったんですね。

今思うと、まるで、建築業界の人が頭を使っていないかのような考え方で、すごく失礼なんですけどね。

―建築業界も専門的な知識が必要な印象です。でも、リフォーム会社というと、現場仕事というよりはオフィスで頭を使うホワイトカラーのイメージですね。

そうですね。どちらかというと、専門職というよりは、営業色が強いですし。実際、びっくりするぐらいリフォーム業界って素人も多いんですよ。もちろん職人もいるけどね。

―そうなんですね!

僕にとっては学生時代の建築現場のアルバイトが大いに生きるような業界だったんですね。例えば壁一つとっても、どんな素材を使ってるかとか、壁の中がどうなってるのかを知っているだけでかなりのアドバンテージになったんですよ。

―素材の名前や建築物の構造を知っているというのは、強いですね!

自分で言うのもなんだけど、リフォーム屋さんに入った当初から、めちゃくちゃ活躍できました。

―即戦力ですね!

そうですね。今となっては、職業訓練校に入るとか、大工さんとして3年間修行してから入社するのが本流になってきましたけどね。

―そうなんですね。高校で留年したということでしたが、大手のリフォーム会社に入るためにかなり努力をされたのでは…?

確かに、今だったら入れないかもしれないですね。当時、実は会社自体がまだそこまで大きくなかったんですよ。よく街にある「どこどこリフォーム」というリフォーム専業の会社では、1店舗あたりの売り上げがおよそ2~3億ぐらいなんですよ。僕が会社に入った当時は、まだ全国で7、8店舗ぐらいだったので、仮に1店舗が売上3億とすると、全国で30億ぐらいですよね。それくらいの規模感だったんですけど、僕が退職する年は売上600億円でしたからね。この15年間でめちゃくちゃ大きくなったんです。

―おぉ~すごく成長しましたね~!その一端を担っていたんですね!

そうかもしれないです(笑)。新卒採用や人事も経験しましたけど、新卒で100人ぐらい入るような会社になっていたので。

―100人も採用しているんですね!採用にはどんな基準があるのでしょうか?

実はそこまでなくて、学歴や実績よりも、人物評価に重きを置いている会社でした「建築屋に入るとなると、建築学部じゃないとダメですか?」とよく質問されましたけど、新卒のうちの7~8割は文系でした。もちろん理系がダメとかでもなくて。知識や技術は後からでも身につきますけど、人間性を会社の中で育むって相当難しいのでという考え方でしたね。

―人間性、大切ですよね。知識や技術は後からでもということですが、実際に現場にでる人はどのくらいの割合なんですか?

特殊な会社で、営業と現場管理を兼任する会社だったんですよ。なので、必ず全員が現場に出ますね。

―全員ですか!

どちらも兼任でやるところは今でもかなり少ないですね、分業が普通の業界なので。

―そんなイメージでした。女性も多いのでは?

多かったです。リフォーム屋さんって、テレビ番組や雑誌でもよく取り上げられるし、インテリアのイメージも結構強くて、ホームステージングとか華やかなイメージがあって、女性の希望者も多かったですよ。

―時代の流れと共に、会社のイメージも大きく変わってきたかんじでしょうか。カズ―さんが会社に就職された当初は、抱いていたイメージとのギャップはありましたか?

働き始めの時は、もうめちゃくちゃ明確に覚えています。働く前はもう世捨て人みたいな考え方だったんですよ、「俺なんて…」みたいな。とはいえ、色んなことを思って一念発起して社会に出たわけじゃないですか。一旦挫折をしているので、会社に入った時は26歳だったんですけど、人の3倍やらないと口も聞いてもらえないと思っていたぐらい卑屈だったんです。

―それくらいやらないと認めてもらえないと思っていたんですね。

働き始めの初日にめちゃくちゃ朝早く行って、掃除して待っていようと思って。そしたら、始業時間ギリギリにぽつんと一人の事務員さんが、こちらをジロジロ見ながら来たんです。「おはようございます!!!」って元気よく言ったら、「あ、ああ…」みたいな感じだったので、「あれ?なんかちゃうな」と思いつつも、鍵を開けてもらって入って…。

―温度差が凄いですね。

「自分、今日からお世話になります!川本と言います!何かやれることありませんか?何でもやります!!!」って言うんですけど、「あぁ…どうも、みんな来るまで座っててもらっていいですか…?」みたいな。で、みんなゾロゾロ来たので、一人一人に、「おはようございます!おはようございます!!」「今日からお世話になります!」とか言うんですけど、誰にも全然響かないんですね。

―揃いも揃って響かないって残念ですね…(笑)。

その時に、社会は俺が思ってるほど優秀じゃないかもしれないって気付きました。「クズばっかだ、挨拶一つできないんだ、この人達」って思って。チャーーーンス!!」って感じました。「頼むから全員そのままでいて~。俺は3倍やるので、そうしたら追いつけるかも!」って思ったんですよ。そういう印象でした。

―えぇぇ!ポジティブ!その考え方は面白いですね!

もちろん途中途中で天狗の鼻折れはしょっちゅうありました。「あ、やばい、この人めっちゃかっこいい!」「この人超優秀!」と思うこともあるんだけど、最初にブーストが効いたのは良かったんですよね。やる気になったというか、「ああ頑張ろう!」と思って。

―そのブーストすごいですね。そこまでやる気満々な新入社員はなかなかいないと思います。

そうかもしれないですね(笑)。

―私がカズーさんだったら?と考えると、「あ、社会ってこういう感じなんだな」ってなって、染まるような気がします。「チャーンス!!」ってなるのは、個性的ですね!(笑)(なる美)

それくらい本当に自分のことをダメだと思ってたんですよ。もう無理だってね。

―そんなに…!学業に関して、ということですか?人間性も?

学業が必要だと思い込んでいたっていう方が正しいかな。人間性は、会社で活躍する上ではそんなに重要じゃないと思っていました。人間性はプライベート、学業や知識や技術は仕事、みたいな風に僕の中ですごく明確に切り分けられていましたね。本当に九九が言えないような男だったので、その状態で会社に入って、「活躍できるわけがない」と思っていましたね。

―でも、入社してみたら「学業なんて関係ないじゃん!」ということが分かったんですね。

すーぐわかりました!だって、入ってからの成績、すぐ1位でした

―おぉ!営業成績ですか?

営業兼、現場管理なのかな。営業成績って数字で必ず出ちゃうんですよ。

―入社時の印象から、この会社に未来はないなと見限ることはなかったのですか?

全くなかった。本当に世間知らずだったんです。最初の1ヶ月目に給料が20万円ぐらい振り込まれますよね。これまでは体を使って、埃かぶって汗かいて、クッタクタになって、大変な思いをしてやっと1日1万円とかもらえる生活をしてたのに、入社した初めの頃って、特に何もやることないんですよ。

―入社直後は確かにそうですよね。

先輩についていく、先輩が昼飯をおごってくれる、17時ぐらいになると「川本君、そろそろ帰っていいよ。」って言われて。「何もやっていない1ヶ月に20万円ももらっていいの?やった!」って思っちゃった。それくらい世間知らずでした。

―むしろ良い会社だと思っていたんですね。それからしばらくは、その会社の中でトップを取ろうという気持ちで頑張ってこられたんですか?

そうですね。トップを取ろうとは実は思っていなくて、とにかく人の3倍やるしか思ってなかったです。結果が勝手についてきたっていうだけで。

―人の“3倍”というのは、本で読んだとか、何か影響された出来事があったんですか?

ないです。そんな社会のことを何もわからない人が本なんて読んでいるわけもなく…(笑)。“とにかく一生懸命やる”というのを、後になって言葉を置き換えるとそういう心境だったなというだけで。当時はもう、がむしゃらでした。

―会社組織に入ってしまうと、どうしても会社に染まりがちになりますが、ご自身の考えを貫かれたんですね!

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