違和感が気持ち悪い。ただ思うままに…

―光さんは、お子さんの学校生活でもたくさんの違和感と葛藤があったんですね。

その都度いろいろ対応してきました。クレームとかではなくて、ちゃんと問い合わせをしていて、「私はこういう考え方なんですけど」って伝えていました。本当に簡単なことで、例えば「中学校だったら上着を持たせたい」とか「スカートで冷えるからひざ掛けを持たせたい」っていうと、「検討します」から始まって、「カーディガンはダメで、ひざ掛けは授業中だけなら使っていいです」って。

―え…厳しい回答ですね。

ひざ掛けをさ、授業以外で使うと何が起こるんだろう?スーパーマンごっことかで争いになるとかそういう発想なのかなとか(笑)。

―スーパーマンごっこ…!(笑)

いちいちあほらしいなとか思うけど、そういうことも一般の人には伝えていかなきゃ、教育現場の違和感を世間は分からないんだろうなと思う。公立の中学校でセーラー服だったんですが、「カーディガンはダメだけど体育のジャージならいいです」って。そのジャージが半分襟が立った、前が全部は開かないやつで、セーラー服もジャージも両方襟があるのにどうやって羽織るのかなと思って…。

―セーラー服にジャージはモコモコしますよね…。

ね。なんでセーラー服に着やすいカーディガンにしないのか、全然わからない。派手になるのが懸念されるのならカーディガンの色を指定すればいいのにね。本当にただ謎だなと思って、「先生、謎に思われないんですか?」って問いかけたくて、コーディネートの写真集を夏休みの自由研究として先生にお届けしようと思ったんだけど、また娘に「やめてください、もう二学期学校に行けないです」って言われてしまいました(笑)。

―娘さんも、大変ですね…(笑)。

そうだよね(笑)。仕事でもプライベートでも、違和感をそのままにしておくのが気持ち悪いんだよね。障がい福祉の分野だと、そういうのが求められているというか、風穴を開けるみたいな点で役立つけど、家庭では全然求められていないですね。

―特に教育現場の変化はなかなか難しそうですよね。

別に戦いたいわけじゃないけれど、違和感をそのまま飲み込むのが苦手ですね。「やっぱり疑問なんだよなー」ということがあれば、やれる範囲で行動しちゃいます。ゴミを拾うこともその一つで、「なんでこんなところに吸い殻が」って思ったら拾うし、マンションの共有部分の草むしりもします。プライベートも仕事も一緒で、仕事だけ“仕掛人”的なわけではないですね。

―「思ったことをやっているだけ」ということですね。

そうそう。やれる範囲でね。草むしりもやろうと思った時だけやるし。「何でブタを買ったんですか」というのとセーラー服の話は同じような感じで、「何か変でしょ」って思ってやるんだよね。相手は相手で「なんでそれが疑問なの?」という疑問があるわけだけど。

―なるほど。全部繋がっているというか、同じスタンスなんですね

セーラー服の上にジャージがOKなら、「ジャージでいいじゃん」と言う人もいるし、色んな人がいるよね。「やっぱり対話は大事だろうな」と思うけど、対話は対話で苦手なんだよね。大事だとは思うけど、気の合う人と話してればそれでいいかな。つるむのが苦手です。

―合わせるとか?

苦手ですね。みんなで買い物行ったとしたら、「じゃあ何時集合ね」とか言ってそれぞれ行動する。人のお買い物に付き合ったりとかは絶対しない(笑)。誰かと美術館行っても、自分のペースで見るとか。出たかったらさっさと出て、コーヒー飲んでるとか。

―出ちゃうんですね(笑)でも、私も自分のペースで見て、しゃべりたい時に探しに行って「この絵ってさぁ〜」と話しかけたりします。

そうそう。勝手な人っていうかね(笑)。

小さい頃から探していた「私がすべきこと」

ちょっとスピリチュアルな話になるけど、私の魂が宇宙的らしいんですね。それが秀でてるとかそういうことじゃないんだけど、タイプとしてそうだから浮いちゃうというか、だから「変わってる」と言われると思ってるんだよね。一生懸命色々やってるんだけど、結局は合わせられないし、全然わからないから…「そうですね」って言っとけば済む場面なのに、「違うと思います」って言っちゃうんだよね。

―えっと…輪廻転生という言葉がありますが、光さんは、地球に住むのは初めてかもしれませんね(笑)。

たぶんね(笑)。そういうことが分かる友達に、「多くの人は違うと思っても“違うと思う”と言えなくて悩んでるんだ」って教えてもらったことがある。例えばさっきのカーディガンの話も、「カーディガン着せたいけど、電話するのはどうかな、娘はもしかして嫌がるかもしれないし、もしかしたら成績にも響いちゃうかもしれないし、周りのお母さんから何あの人って思われるかもしれないしってみんな悩んでるの!」って。

―確かに、普通のお母さんはそう思いそうですね。

私はどうしてそこに悩む必要があるのかが、本当にわかんなくて…。今も相変わらず本当にわからないんだけど、「あぁそうか」って思うことが最近は少しずつ増えてきました。

―光さんの魂は、そういう役割というか、使命みたいなものはあるんでしょうか。

使命があるとは、あんまり思わないかな。「ここで何かしたいから来てる」っていうのは分かってて、小さい頃からずっと、“することがある”という感覚があるんだよね。みんなそうだと思ってたけど、友達に言ったら「何それ」って言われたよ(笑)。

―そうですよね(笑)。

子どもの頃からずっとそう思ってたけど、今のような仕事や暮らし方をするようになって、気付いたらそういう感覚がなくなったんだよね。多分、乗っかったんだと思う。

―乗っかったとは?

以前は「やることがまだ何かある」「他にもあるんじゃないか」って探している感じだったけど、今はやることやってて“合致”したからわざわざ感じなくなったのかなって。だから今もあんまり使命感とかはなくて、小さい時から感じていた、“やる事”を今やってるんじゃないかなっていう感じですね。

―そうなんですね。見つかった感じなんですね。

―うん。昔は、もっとがむしゃらだったけど、年齢とか仕事とか色んなことを積み重ねてきて、「色々やったな」っていう達成感もあるから今は少し落ち着いているかな。でも結局新しくセラピーとかも始めてるから、「また次があるのか」みたいな感じなんだけど(笑)。

―“このまま進めば大丈夫だよゾーン”にいるような?

そうそう。そんなかんじかな。

―宇宙トークが盛り上がってきました(笑)。

今日は、“人生”とかって言われると宇宙の話しないといけないから、困っちゃうなと思って(笑)。でも、記憶があるとかそういうことでもないんですけどね。メッセージが見えたりはするんですけど、怪しく聞こえるのでやめときます(笑)。

―ぜひ、後で話しましょう!paletteは宗教団体とは一切関係ありません。って、書いときます(笑)。

自分らしさを見つけるきっかけづくり。

―光さんは、35歳の時に今のポパイの仕事についたんですよね。“教育”に関心があったとのことですが、今はどうですか?

元々は教育から始まっているんだけど、教育や福祉を「仕事にしたい」と思ったのはある程度大人になってからなんですよね。たまたま夫が障がい福祉の仕事に就いて自分も手伝うようになって、大人であろうが、子どもであろうが、“その人がその人らしくいられる場”や、“機会”を作りたいと思っていて。

―素敵ですね。

意外と知らない自分のことって結構あると思うんだけど、例えば私がポパイでみんなと一緒にパフォーマンスをしていると、今までやりたいと思ったことがなかった人も、やってる人を見たらやりたくなって「自分も入れてほしい」って言ったり。パフォーマーとして表に出てみたら、「すごい楽しい!」とか知ったり。やってみて気付くことがあるよね。

―知らない自分を発見するきっかけ作りみたいなことですね!

障がいのある人たちはチャンスが極端に少ないし、それこそ「夢は何ですか」って聞かれないかもしれない。学校もたくさんあるわけじゃないし、就職もチャンスがあったとしてもすごく狭いし、職場の方たちに理解してもらえるかどうかとか、色々な難関があります。

―なるほど。

その後どういう風に暮らしが変化するか分からないけど、ポパイでパフォーマンスやアートをやりたい人には提供できたらいいなと思う。やってみて嫌なら嫌でいいし。だからベースは教育と一緒で、私が教育に対して関心があることはそういうことですね。

―自分らしさを探すサポートという感じでしょうか。

自分の得意分野でしかサポートができないんだけど、でも、それでいいと思ってる。例えば、私は事務局なので事務もやるんだけど、事務のエキスパートが他にいるから、そういう事務はそのスタッフに担当してもらえば、私はパフォーマンスの分野をやれるよね。日常の支援は専門の支援員が担当して…と、みんな得意分野で持ちつ持たれつでやっているかな。

―いいですね。それぞれの個性を活かし、支え合う関係。

スタッフそれぞれの興味関心をもっと出していけたら、「こういうのやってみたらどうかな」というのが広がると思ってる。障がいのあるメンバーの選択肢がもっと広がるんじゃないのかな。それを私が率先してやってるというか…でも、決して見せるためにやってるのではなくて、どうしてもやってしまう、そうなってしまうっていうかんじ。

ポパイでの司会ユニット

―どうしても体が動いちゃうんですね。

全然指名もされてないのに、勝手に自分のポジションを作っちゃってて…(笑)。全員がそうじゃなくてもいいけど、自分を活かしていけるようなことがどんどん広がればいいなって。自分もやりたい事ができるし、みんなに貢献もできるし、他のやりたい人も混ざれる!相乗効果でもっと良くなるかなって。

―自分らしく生きられることで、活かし合えるというかんじですかね。

そうそう。全部は無理でもちょっとでも増やせたらいいかなと思っています。

―ポパイで働きたいという人は、そういうものを求めて入ってくる人が多いんですか?

そういう人もいるし、障がい福祉がやりたいとか、ちょっと興味があるっていう人もいる。パフォーマンスの方は今のところはいないけど、チャンスがあればやりたいですっていう人もいるし。

―入ってからやりはじめるのでしょうか。

そうだね、それを目指して入ってきたわけではないけど、「元々バンドやってたのでやるならやりたい」という人はいます。でも、ダンスをやったことがない人でも、やり始めたら「すごく楽しくて、家でも踊ってます」って言ってたスタッフがいたから、ユニット*の担当になってもらったのね。すごく喜んでくれて、プライベートでもダンスのレッスンに通ったりして、“大好きな趣味”になったという人もいる。こういうことは、障がいのある人たちだけじゃなくて、スタッフにもどんどん広がったらいいなと思ってます。
*ユニット:パフォーマンスグループのこと

―スタッフの方が活き活きできる職場の雰囲気が伝わってきます。そういう雰囲気を、きっと光さんはつくっているんですね。

そうかな。なかなか最初は「これをしたい」という説明が本当に難しくて、「どうしてこれをやらなきゃいけないのか」みたいな話が出ていた時代もあったけど、今ではうちの職場ではそれが当たり前になっちゃってるかな。職場全体としては楽しい雰囲気かなと、私は思っています。

―最初のパルコの話もそうですけど、“人が変わっていく”ということを、光さんはどう考えていますか?

「こうだから、こういう風になると、こうなるのよ」っていうセオリーみたいなことじゃなくて「こうやって人って変わるのか」ということをパルコさんでのポップアップを通して直に知ったんだよね。きっかけがあると変わる人もいれば、変わらない人もいるし、よくわかんないけど担当になっちゃってやってみたらハマる人もいて、だから“人が変わるタイミングはそれぞれなんだな”っていうのは、10年ぐらいやってる間に思いました。

―いろんなパターンがあるから、またそれも人の面白さですね。

ポパイのウェブサイトより

とにかくやってみよう!”の空気

前に、“身体を知る”というようなワークショップをやった時に、講師をやってくれた知人が「ポパイっていいとこだね」って最後に言ってくたんだよね。そのワークショップの時は、何をどんなふうにやるかを一応スタッフには説明してるんだけど、ちょっと分かりにくい内容だったから、スタッフのみんなは何をやるかよく分かっていなかったんだけど、「何何?もう何をやらされるんだろう!」みたいな雰囲気は全くなくて、「わかんないけどやってみよう!」という感じにびっくりしたそうです。

―スタッフのみなさんがすごくポジティブな反応だったんですね!

そういうふうに “開かれてる”という意味で「ポパイっていいところだね」と言ってくれました。

―なるほど。

だから、自分自身は「やりたい」と思ってやってきただけなんだけど、今までのみんなの積み重ねでそういう雰囲気になって、想定してなかったところまで変化があったことを気付かされてすごく嬉しかったです。もちろん逆もあるから良いことばかりじゃないけどね。自分が渦中にいると一生懸命になっちゃって、なかなか客観的に全体のことを見れなくなっちゃうからね。でも、そうやって改めて反応を実感できるのは「ありがたいな」と思った瞬間でした。

―昔はあんまり開いている感じがなかったということですか?

そうですね。障がいのある人たちは、動くのが好きな人もいるけど、多くはあんまり動かないから、身体も動かしにくくなっちゃったりして、出無精になっちゃったりするんだよね。散歩って言っても、ちょっと歩くぐらいで終わっちゃったりして、どうしても運動不足になっちゃうんですね。

―そうなんですね。

それでスタッフが模索する中で「和太鼓はどうか?」っていう提案があって、先生は見つけたんだけど…ポパイは街中にあるので和太鼓を鳴らせる環境や荷物の問題で、難しいと分かったんだよね。だったら、“身一つ”でできるダンスがいいんじゃないかということでダンスの取り組みが始まりました。

―確かに太鼓は何かと大変そうですね…

そうやって、私はスタッフの声を拾ったつもりだったんだけど、担当になったスタッフから「なんでダンスをやらないといけないのか」って疑問の声が出たりしました。講師とコミュニケーションがうまく取れなかったみたいで、2年位は落ち着かなかったかな。お互いの経験が違いすぎて、スタッフからすると「アーティストすぎて、何を言っているかわかんない」って。あと、緊張しちゃって話せなかったみたいです。

―相手がプロだとなんとなく萎縮してしまいますよね。

3年ぐらいして、やっと講師とスタッフがしゃべれるようになったんだよね。後から当時の担当スタッフに聞いたら、「もういいや、言ってる意味はわかんないけどとりあえずやろう!って2年くらいしたら思った」と言っていました(笑)。ダンスの担当スタッフは何度か代わっているけれど、1人1人の積み重ねで、ポパイの“やってみよう”っていう空気感ができたんじゃないかなと思います。そういうのを最近知ることができて、積み重ねてきて良かったなって感じました。

ポパイのダンスグループ ウゴクカラダとオーストラリアの福祉施設ルーセラン・サービスの共同作品『CONFUSION INCLUSION〜For You〜』(palette編集メンバー岩田さんの撮影・編集)

―“やってみよう”の空気、とても大事ですよね。

ほんとほんと。「やりたくない」でもいいし、「やりたいけどちょっと体がついていかない」でもいいんだけど、「こういうのに挑戦したい」とかの意見を、みんなが言いやすくなるような雰囲気を今後作りたいなと思っています。私自身はスタッフに助成金の申請書の書き方を教えたりとか、そういう方に回っていきたいと思ってます。

―自分は裏方で、他の方に前に出て挑戦してもらいたいということですね。

そんな感じです。

―なるほど。光さんは、パート勤務なんですか?

パートで自由気ままにやらせてもらっています。私、決まった時間に決まったことをするのが全然できなくて…働いている人だけじゃなくて、専業主婦・主夫の方とかも毎日ちゃんと本当に偉いなって思います。例えばサラリー(給料面)で言えば正規職員になった方がいいと思うんだけども、フリーがどうしてもよくて。他にもパフォーマンスの仕事してるし、今だとセラピーも始めたので…なんか、色々やれるようなスタイルは変えられないです(笑)。

―なんだか自由で楽しそうですね!

「なんでこれをちゃんと極められないのかな。」とか思ったこともあるんだけどね。プロのミュージシャンやピアニストと仕事していると、「なんで私はこうやって、色んなものに手を出してるんだろう、こんなのでいいのかな。」って考えた時期もあったけど、やっぱり私は、“極める”のは違うみたいです。

―“極める”人と、“色々やる人”がいるから面白いというのはありますよね。

若い時にね、ハローワークで怒られたことがあって!「こういう感じでこういう仕事ないんですか」って聞いたら、「あなたのような人が来るところではありません!」って言われちゃった(笑)。

―え?!要望が自由すぎたのでしょうか?怒られることもあるんですね…!

「自分で探せるでしょ」って。“健康なんだし、やりたい方向もあるんだし、ワガママ言うな”って言われてるんだろうなと思った。本当に職業にちゃんと就きたくて、私も真剣に相談してたんですけどね。多分愛を持って言ってくれたんで、傷つかなかったんだけど。

―安心しました…応援してくれていたんですかね。

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