事業を譲り、離婚。変わった価値観
ー今の旦那さんと出会う前のことで、「今考えると、変わったことしていたな」と思うことはありますか?
洋服屋さんをしていた時、その当時の名古屋では、服屋がオリジナルの鞄を作るのがちょっと流行ってたんですね。もう10年ぐらい前のだけど、私たちが作ったデザインが小バズったんですね。今でもたまに街で見かけるくらい。それを作るのに中国に行って、工場を見たりとか色々していました。
ーすごいデザインだったんですね!
でも、お金儲けに走ると、人って変わっちゃったりするし、わーっと遊んだりもして結構楽しかったけど、結構無理もしてたし…。でも譲れなかったこともあって、その時から少しずつ「違うな〜」と生き方に違和感を感じていました。
ーそれで仕事を変える流れになってきたんですね。
今思うと、“人として変わろう”と思ったポイントにもなりました。自分が個人事業主でやっていた事業だったんだけど、前の夫に権利を譲る話になった時に、当時の細かい気持ちはもう忘れちゃったけど、頑なに「ヤダヤダ」って譲れない自分がいて。信用してなかったのかな…もうちょっと優しくできていれば変わってたかもしれないなとも思います。
ー人として変わろうと思ったきっかけでもあったんですね。
結果的に一緒にいる選択をしたくなかったから当時の夫とは離婚はしたんだけど、そしたら新しい方に出会って、彼に自分自身のことを教えてもらったって感じですね。その時のことを思い返すと「私、全て向こうが悪いと思ってたけど、私も悪かったな。」って気付かせてくれました。
ーその会社は今も前の旦那さんがやっているんですか?
やってると思うけど、どうだろうな。やってるかどうか分かんないですね。表参道と代官山にお店を出してたんですが、もう無くなったって聞いたから、売ったかもしれないし、分からないです。
ーそういう様々な経験を乗り越えて、気付きを得られたんですね。
落ち込むことってそんなにないんだけど、その時は “自分の子どもを取られた”みたいな気分になって結構落ち込みましたね。今は全然大丈夫だけど。
ー全力で仕事に打ち込んでいればいるほど、喪失感も大きいですよね。洋服屋さんの時は、好きな旅行とかもなかなか行けなかったんではないですか?
ううん!行ってた!洋服を仕入れに行く時にロサンゼルスとか、ハワイ、韓国、タイ、香港、中国とかも行きましたね。でも、楽しかった記憶はあまりないですね。
ーすごく飛び回っていたんですね!世界各国への買い付けってなんだかとっても楽しそうですけど、楽しかった記憶がないというのは、事業に対する不安とかからでしょうか…?
不安もあったかな。元々一人でやってて、いきなり元夫が勤めてた会社を辞めてきて、「一緒にやるわ!」とか言い出しちゃって、二人でやっていました。買い付けはアウトレットとか、ショールームを見に行ったりしましたが、別に大したことはしていなくて、観光まではできなかったです。
ー確かに、今のまりえさんのテンションでワクワク感は伝わってこないですね…。
そうですね(笑)。結果的には、色んな経験も、それはそれで良かったんだと思います。
ーそういえば、ハワイでの結婚式はワクワク感満載の派手な演出でしたよね!
あれはね…!あたしの作品と思って作ったんです。結婚式の画像はこれですね。

ーわ!すごいおしゃれですね!この背景はなんですか?
これはスモークを焚いているの。
ーへー!なんだか映画みたいで素敵です!!
ネットで色々検索して、こういうのがいいなと思って選びました。自然のある場所が良かったので、牧場でやることにして、このスモークを焚きたかったんです。
ー初めて見ました!すごい良いですね!!
アメリカの製品で、日本では輸入していないのでできなくて、ハワイだったらできると知って、やりました。誰も撮っていないような写真を撮りたくて!
ー結婚式の話、ワクワクがすごく伝わってきます!今の仕事も企画とか開発系が多いですけど、“みんなが楽しい”を作ることがお好きなんですね。
そうですね。物を作ったり売ったりして満足するのがゴールではなくて、最終的に、それを手にした人たちが楽しくいられるところまで考えたプロダクトだったらいいなと思っています。洋服やった時もそうだったし、今も、“最終的にユーザーの人が喜んでくれる”というコンセプトや世界観でお仕事をするようにしています。
ーなるほど、その世界観は素敵ですね。今までのお話を聞いていて、あまり知られていないようなものを世の中に広めることもお好きなのかなと思いました。
私もたくさんモノを作ってきましたけど、「今あるものをどうにか工夫して、その良さを伝えられたらいいよね」と思っています。だから、今はモノを自分から作るっていうことはせずに、“今あるいいモノ”にフォーカスして、無駄なものを削ぎ落とすじゃないけど、本当にいいモノにみんなが気付くような、そういう時代が来るといいなと思ってます。
ーどんどん作って消費してもらう幸せじゃなくて、今あるものを活かすみたいなかんじですか?
そうですね。それが本当の幸せだと思います。
心が元気になる商品 エコって楽しい!
ー大量生産、大量消費ではなく、エコな考えですね。ちなみに、今売っているのは何ですか?
シャンプーバーです。
ーシャンプーバーとは?
シャンプーの石鹸です。なぜシャンプーバーがいいかというと、容器にペットボトルを使ってないんですね。固形石鹸のようなシャンプーだし、包む容器は、紙と澱粉と竹で作られてるので、45日間で土にかえるっていうコンポスト*の容器で、脱プラスチックなんです。
*堆肥を作る容器のこと
ー容器も!エコですねー!
シャンプーバーは普通のシャンプーよりも長持ちします。通常のシャンプーボトルってプラスチックですけど、水が入ってる分、体積があって幅も取るんですね。その重さの分、トラックでの運搬時にCO2の排出量も増えますよね。輸入商品なので飛行機を使うってなると、結局どちらもCO2は出るんですが、「だとしても違いがあるよ」ということです。
ー確かに、1個ずつの差は僅かでも、世界規模で考えたらきっとすごい量になりますよね。
そう。だからすごく好きなんです。あとデザイン性もすごく高くて見ててかわいいし、心が元気になれる商品だから、良いなと思っています。エコな商品ってめっちゃ楽しいんです!
ーたしかにエコな話を聞いているだけで、幸せな気分になってきました。
使ってて心が優しくなれるっていうか。だから、その思想みたいなものがもっとみんなに伝わるといいなと思って、お仕事をする中でも色々と考えてます。
ーシャンプーバー、私も使ってみたいです!見た目は普通の石鹸なんですか?
石鹸なんだけど、クリスタルみたいなかんじで、綺麗です。まだ日本には出回っていなくて、今、日本用にちょっとアレンジが必要なので、販売方法とかも含めて考えているところです。
ーアレンジとは、そのままだとサイズが大きいとか?
いえ(笑)。ナチュラルな成分だから輸入過程で溶けちゃうことがあって、例えば紙を1枚敷いて防ぐかとか、そういうことを考えています。

ーそれもエコな観点でいくと、簡単には解決しなさそうな課題ですね。
今は、両手を使ってシャンプーをワンプッシュをする行為自体もちょっと面倒くさいっていうかんじになっちゃっています(笑)。石鹸は取って、くしゅくしゅってやるだけだし。しかも地球に優しいと思うと、こっちの方がいいなって思いました。自分が豊かになることももちろんなんだけど、自分だけじゃなくて、地球までとか、自分の外のことも思えるようになると楽しいです。
ー自分だけじゃなくて地球のことまでという考えは、前から思われていたんですか?
全然!全然思ってないですね。だってもっと前は、自分だけでいいみたいな感覚だったからね。ほんと、ここ数年、結婚したぐらいからかな、ちょこちょこ変わってきましたね。
サウナ、レッドテント…ピルをやめた理由
ーサウナもお好きですよね!
そうそう、また変な話なんだけどね、最近気付いたことがあったんですよね。
ー変な話、大歓迎です(笑)。
私、子宮筋腫の病気をしてて手術したんですが、その前と後にずっとピル*を飲み続けていたんですね。でも、さっきも滝行の話が出たんですけど、ある時、精神性を高めることに興味を持ちだした時があって、レッドテントっていう、赤い部屋の中に入って女性達のサークル(ウーマンサークル)を作ってエネルギーを高めるっていうワークに参加したことがあったんです。
*排卵を抑制したり、生理予定日のコントロール、生理症状軽減等に効果のある女性ホルモン剤。
ー赤い部屋でエネルギーを高める…そういうのがあるんですね。
「女性が生み出してる生命の血液は土に返しましょう、それが自然の摂理で、循環した流れだ」ということを聞いて、“私はピルで血を止めてた”って気付いて、「なるほどな」とすごく納得したんですよね。
ー自然の摂理、なるほど。レッドテントのレッドは血液からきているんですね。
フェムテックも、なぜやってるかというと、そこに繋がってくるんです。また、変な話になっちゃうけど、最近読んだ本でも、女性性を高めたり、骨盤底筋を高めると、平和だったりとか、愛みたいなのが広がるっていう言い伝えが昔からあるらしいんですね。
ー骨盤底筋と平和が結びつく言い伝えがあるんですね!初めて聞きました。
インディアの言い伝えらしいんですけどね。私がサウナをやる理由でもあるんですけど、ネイティブインディアンの儀式でスウェットロッジっていう、火、土、風、水のエネルギーを取り込んで、サウナ自体を子宮に見立てて生まれ変わるっていう儀式があるんです。
ーサウナ自体が子宮!なるほど!先ほどの話と繋がってきましたね!
そうやって色々繋がっちゃって、面白くなっちゃったんですね。そういうのに目覚めるようになって、レッドテントも体験して、ピルを飲むのもやめてから、さっきも言ったように変な妖怪になっちゃったし(笑)。色んなことを感じるようになって、「地球と一緒に動くことがいいんだな」というところに来ちゃったんですよね。
ー生命は地球と共に生きているということですね。
今日の朝もね、『天気の子』という映画を見てたんだよね。地と天の間で人間は生かされてるっていうのを、「ほうほうほう」って面白いなと思いながら。そういうことを私達人間のことだけで考えるんじゃなくて、全部の生態系、惑星も含めて考えて、「宇宙にいるんだ。自然にいるんだ」ということを感じながら生きるようになると、悩みもなくなるし、「本当楽しく生きられてるな」って思います。多分これ言ってると変な人ですよね(笑)だからうちの夫に変って言われるんですね!
ーそうかもしれませんね(笑)。マイノリティというか、みんなが気づいてないから変だと言われるだけかもしれません。
本当ですか。みんな気付いていないのかな?こんな話で大丈夫かな…?(笑)
ーはい、大丈夫です(笑)。滝行もその流れでやるようになったんですか?
そうそう!セレモニーの一つなんですね。
ーなるほど。自然を感じるにはうってつけですよね!元々そういう話に敏感だったんですか?
全然敏感じゃないです。ただ、勘がいいなとか。これなんかあったような気がするみたいなものは、ちょっと強かったかもしれないです。
