他人から見たらストイックと思われるのかも 

ー続いて、7つの言葉について伺いたいと思います。(自分を表す7つの言葉を、近しい方からいただいてくださいというお願いをしました。)

おおらか わっしょい 段取り 映画 ストイック お酒 フェチ

一緒に住むパートナーの女性からいただきました。解説がいるのはフェチだけですね。

ーどういうフェチなのか、どきどきです・・・(笑)

彼女が言うには、ある特定のものに反応するところだそうです。性的なものではないです(笑)。例えば、映画の一部分、ある5秒がものすごく良いなと思うときに「うわあ〜」「いい〜!」「わかる?」みたいなことをよく彼女に話しているんですよね。ゾワゾワとなる、みたいな感覚です。ただ、それを言ってもあまり理解されないので、偏った見方をしているという意味で「フェチ」なんだと思いますね。

ー細かい部分に関して一人で盛り上がっちゃうんですね。一番最初に出てくるのが「おおらか」なの、いいですね!

おおらかですかね・・・?結構感情が読みにくいとは言われているので、知り合った当初だったら出てきてなかったと思います。今でも、「何考えているかわからない」「静か」「話題に興味ない」とはよく言われますね。実際のところ、ちゃんと聞いているし、観察もしているんですけどね。一人で脳内会話をしています。

ー脳内会話はパートナーさんに伝わらないですよね(笑)。「お酒」とありますが、結構飲まれるんですか?

毎晩飲んでいますね。飲むのは大抵ビールかワイン。決してお酒が強いわけではなく、飲み過ぎると酔うし記憶が飛ぶことも多々あります。ちなみに僕は左利きなんですが、「左利きあるある」を読むと、左利きはアル中が多いと書いていて、将来そうならないか怯えています(笑)。

そうなんですか!気をつけてくださいね(笑)。

といっても、しっちゃかめっちゃかするだけではなく、味もちゃんと嗜んでいて、ビールやワインの味の違いを楽しむことも好きですね。さまざまな価値観を知りたいという欲がここにも現れているという感じです。

ーあら、うまくまとめて仕事につなげましたね(笑)。「わっしょい」は岩田さんのイメージになかなか当てはまらないんですが・・・

わっしょいは飼っている猫の名前です。言わないとわからないですよね。メスの猫なんですが、知り合いのカメラマンさんが撮影する際いつも「わっしょい」とおっしゃっていて、「いいな、この響き」ということで採用しました。呼ぶたびに元気になるので、すごくよい名前だなと思っています。5秒くらいで決めました。

ー確かに、元気になる言葉ですね!「段取り」や「ストイック」についてはいかがですか?

映像制作は事前準備によってクオリティに差が出てくるので「段取り」がとても重要です。それが生活面にも表れているのかもしれませんね。とくに映画制作は公開まで2〜3年かかることは普通なので、他人から見たらストイックと思われるのかもしれないです。まあ、情熱大陸やプロフェッショナルなどに出演している人と比べたら全然ストイックのレベルに達していないとは思いますね。ちゃんと寝ますし(笑)。睡眠時間は削らないタイプです。

“両方”あってこその自分

ーストイックという話でいくと、クリエイティブなお仕事って、どこで仕事を終えるか難しいですよね?「もっと極めたいけど諦めなければ・・・」となりそうなイメージですが、岩田さんの妥協ポイントはどこですか?

めちゃくちゃ現実的ですが、これは即答で「納期」です。納期しかないです(笑)。

現実的ですね!

みんなそうですよね?逆に、自主的に制作するものは納期がないゆえ、なかなか形にならないことも多く、納期のありがたみを痛感します。ただ、クライアントワーク*の多くは、自分の意思以上にクライアントの意向が重要視されるので、自主制作をすることは、自分自身にとってすごく重要です。先ほど自我を無くすとお話しましたが、そればかりだと本当に自分の自我がなくなってしまうので、適度に自分自身の関心や興味に一致する制作も必要だと思っています。

*クライアントワーク:お客さんに依頼された仕事のこと

なるほど。自主制作も大切にしてこそ、岩田さんが保たれているんですね。

そうですね。自分の自我を出す仕事とそうでない仕事を両方持っておくことで、バランスを保つようにしていますね。溜まったストレスを別のところで発散するみたいな感じです。

そうなんですね。

ちなみに、僕はミュージックビデオ制作もやっているんですが、ミュージックビデオの場合には自分の作家性と相手の求めるものがうまく混じりやすいと思っています。なので、初めて依頼していただく際には、自分の作風をお伝えするために、映画よりもミュージックビデオを先に見ていただくこともありますね。

ミュージックビデオを見ると岩田さんの作風が見えるんですね〜!

ミュージックビデオは、音源の個性やモチーフを視覚的に表現するものなのですが、僕の場合は、人による芝居や表情などで見せていくような表現手段ではなく、“物や風景など無生物的なものと人との絡まり”によって見せていく作風が多いと思います。

ー作風の違いって、そういう表現手段でも出てくるんですね。

それと構図の傾向はシンメトリーが多かったり三脚を使って重く見せていく画面が多かったりします。あとは「一度も顔を写さない」「一曲ワンカット撮影」など、一つの大きな制約を決めて作るのも好きです。逆に、元気すぎる曲やウェイウェイしている曲、「イエーイ!明日も頑張ろう!楽しい!」みたいなのは合わないですね(笑)。ちょっと暗めだったり、ひねくれていたりする方なので(笑)。

CRUNCH “Blue” (Official Music Video) 

     最初から最後まで現在の顔が映らない作品。     

penguinrush – 高鳴り(Official Music Video)

 

     ワンカット撮影の作品。  

ーそれが岩田さんの個性なんですね。ところで、岩田さんの原動力となるものは何ですか?

「怒り」ですね。「できていない」「満足できない」という自分自身に対する怒りが、自分のストイックさにもつながっていると感じます。また、できたとしても「もっとできるはず」「もっと良くなるはずだったのに」「次はこんな風にやりたい」と常に思っています。まだ自分は弱小というか、何も為せていないので、もっと色んな人に見てもらえるような作品を作りたいですし、良い作品を作り評価してもらいたいと思いながらしています。

おぉ〜確かにストイックですね〜。社会への怒りとかも?

社会への怒りももちろんあるのですが、今は仕事が忙しすぎて社会に怒る暇もないのが正直なところです。ただ、心の底にはあって、「不公平・理不尽なことはやだな」って思いますね。表現者として社会への怒りを訴える立場にあると考えているので、作品づくりの際にその怒りを引き出すよう心がけています。

自分が良い作品を作り、東海圏での映画制作を根付かせたい。

ー岩田さんの「ありたい自分」てどんな人ですか?

楽しそうにしている人でありたいです。

お!意外な答えですね。

僕自身や僕が作る作品のイメージとは大きくかけ離れていると思われますが、ありたいのは「楽しい」ではなく「楽しそう」です。僕自身が楽しいかどうかは重要ではなく、周りから見た際に楽しそうにやっていると思われたいんです。苦しい人見ているの、辛くないですか?

そういうことですか!正直すぎる言葉で、斬新です。

「感情は身振りより後に来る」という言葉の通り、楽しそうにしていたら楽しいことが舞い降りてくるんじゃないかな、と。どんな時でも楽しくいたいので、猫の名前も「わっしょい」にしました(笑)。

なるほど〜笑ってるから楽しい的なかんじですね!

周りにもよく「無表情」「感情がなさそう」と言われるのも影響しています。「楽しいのになんで伝わらないんだろう?」といつも思っているので、余計に楽しそうでありたいと願っているんだと思います。相手には伝わっていませんが、いつも楽しいしユニークなんですけどね。

ー(笑)そのローテンション、記事で伝わらないのがもどかしいです。

ー岩田さんの今後の目標についても教えていただけますか?

東海圏で継続的に映画制作をしていくムードを『スイッチバック』のプロデューサーと地道につくっていきたいと考えています。その為にはまず、自分が継続的に良い作品を作り上映し続けていくことが大事だと考えています。その流れが広がって、東海圏で映画をつくる人が増えてくれるといいなと思います。地域に文化として根付かせるためには、最初は苦しくても継続することが大切だと思っています。

ーでは最後に・・・岩田さんは、人生ってなんだと思いますか?

「ないものねだりの連続」ですね。色々と考えて、用意してきました。何か手に入れても、別のものが欲しくなったり、自分にないものに関心を持ったりすることが多いと感じるからです。まさに「隣の芝は青い」ですよね。どう考えても自分自身は普通に幸せなんですが、あれがしたいこれがしたいって永遠に思うんだろうな、と考えています。どうでしょう?いいなと思ったんですが、この答え。この言葉の通り、現状に満足せず映画制作を続けていきたいですね。

おぉ〜。「ないものねだり」な気持ちが、映画制作へと繋がっているんですね。本日はお話、ありがとうございました!


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